M・G・ヘネシーさん著、スフェイ・R・モンスターさん絵、杉田七重さん訳の
『変化球男子』(すずき出版)の表紙&扉絵を担当しました。
12歳が直面した、ジェンダー・アイデンティティを巡る物語です。
http://www.suzuki-syuppan.co.jp/script/detail.php?id=1050023669
My new artwork, Japanese edition of The Other Boy (author:@mg_hennessey, illustrator:@sfemonster, translator:Nanae Sugita) is now on sale! I hope this story will help kids suffering from troubles about gender identities, and people around them trying to support them.
版元ドットコムさんの作品紹介がとても秀逸なので、ご紹介しましょう。
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784790233435 (2018年9月4日)
LGBTの子どもが生き方を選ぶとき、両親の理解とサポート、医学的アプローチや精神的なケア、理解者の存在、そして友だちの存在が不可欠です。それらがきちんと描かれ、ドラマを創り出していることは、この作品の大きな魅力です。「希望」を感じるラストは、読者の共感を得て、LGBT理解の一助になると信じています。
一生物学徒として「同一種の生物において個体差というものは意外に大きく、共通性を見出す学問としての生物学にさえ例外が付き物で、世の中には色んな生き物がいる」という考えが染み付いているせいか、私にとってのジェンダー・アイデンティティとは、あくまでも「ヒトという生物種が膨大に持っている表現型のうちの一つ」でしかありません。一方で「私は何者か?」という、自我の芽生えとともに抱えてきたであろう哲学的な問いへの、答えの一つを担うものだとも理解しています。
自分と異なる性質をもつ人を受け入れることは必ずしも自然な行為ではなく、特に同質性・同調性を重んじようとする人にとっては、相当な努力が必要になるだろうと思います。私にも何かしらに対しての差別意識があり、それに付随するマイナス感情は、なけなしの知性と理性でもって極力排除しなければならないという危機感をしばしば覚えます。己の持つ偏見、先入観、生理的嫌悪感、その他脳裏に飛び交うありとあらゆるものを抑制して理性的に人や物事と向き合うことはなかなかに難しく、努力の甲斐なく受け止められなかったものが過去に沢山ありました。ただ、(共感や同情の伴った理解ができなくても)もしその存在を容認することができたなら、その時はきっとお互い上手く共存できるんじゃなかろうかという期待も、自分自身の中には確かにあるのです。
『変化球男子』に登場する人々を通じて、ジェンダー・アイデンティティに対する自分のスタンスを改めて意識される方もいらっしゃるでしょう。表紙でこちらに背を向けた彼の、投げるボールをしっかりと受け止めてくれる人が増えますように。