2016年04月11日

大隅良典先生 受賞記念お祝いイラスト

出芽酵母を用いたオートファジー(Autophagy:自食作用)の研究で著名な
東京工業大学の大隅良典先生が、ガードナー国際賞・国際生物学賞・慶應医学賞を
それぞれ受賞され、文化功労者にも選出されたということで、門下の先生方より
合同受賞記念祝賀会で贈呈される“サプライズプレゼント”をご注文頂きました。
大隅先生、この度はご受賞おめでとうございます!!

実はわたくし4回生の時に、学内で大隅先生のセミナーを拝聴しておりました。
まさかその十ン年後、こうして先生の似顔絵イラストをご依頼いただくことになるなんて!
しかも学部時代からの友達が担当窓口という、色んなご縁を感じる今回のご依頼です。

制作過程はいつも通り、ご依頼時にまとめて送っていただいた資料とアイデアを基にして
関連資料を集めて勉強し、アイデアをひねり出し、ラフを描いてはチェックをお願いし、
頂いたコメントを反映しながら、描き込む内容やモチーフの配置をまず決めていきます。
ラフの打ち合わせを通して「このオルガネラの局在はそうじゃないんだよね」とか
「その現象はまだここまでしか分かってない」とか、「この種類だけが特殊」というような
ごく専門的なレクチャーを受けられるのも、こうしたお仕事の特権です。

ラフの経過.jpg

そうして大量の資料と膨大な数のメールに埋もれながら、イラストの構図が確定しました。

次は、線画の下絵作りと清書に取り掛かります。
生き物はそれぞれ地道にスケッチを描き、実験器具はイラストレーターで形を描いて
それらを下絵に、墨汁と水性ボールペンで線画を描いていきます。
先生ご夫妻の似顔絵があまりにも似ていないとなると、描いている私が大変辛いので、
幾度となく描き直しをして、こちらも何とか納得のいく下絵を準備することが出来ました。

イラストの上半分、背景にあたる部分はTEM(透過型電子顕微鏡)写真のような雰囲気に
仕上げるため、水性ボールペンによる線画と点描で形と質感を表現します。

TEMと点描部分.jpg

左上の核の中身は、点描にすると締切に到底間に合わないことが確実だったので、
ここだけは墨汁で描きました。(そうそう、前の写真の上部にあるリボソームも墨汁で描いています。)

クロマチン繊維の部分.jpg

全ての線画を揃え、高解像度でスキャンし、Illustrator上で着色してからレイアウトをし、
ギリギリまで背景のオルガネラの数と配置を調整して、ようやくイラストの完成です。

大隅先生お祝いイラスト.jpg

幹事の先生方と私のこだわりポイントは山のようにあるのですが、
やはり個人的に一番思い入れがあるのは、背景になっているTEM写真のイメージです。
卒研で電顕のラボに在籍し、教科書等で細胞の細密画を描いてきたこともあり、
やっぱりTEM写真は良いなぁ…ロマンがあるなぁ…と、しみじみ思いながら
脂質二重膜を描いて点描を打ちまくりました。描くのが本当に楽しかったです。

また、Saccharomyces cerevisiaeのゴルジ体が層板ではなくドット状で散在するのだとか、
MAM(mitochondria-associated ER membrane)の存在についても、今回初めて教わりました。
ゴルジ体だけは、さすがに一目で「ゴルジ体」と認識できる形にせざるを得なかったため、
層板が控えめな従来通りのイメージのゴルジ体を描くことになりましたが、
こうした生物種ごとの細胞の特徴を新たに知る喜びは、私にとって何物にも代えがたいものです。

顕微鏡の型番については、いつだったか東工大の大隅研でオリンパス製の顕微鏡を
見せていただいた印象が強く残っていたので、いかにもオリンパス風な角ばったアームに
先生のお顔と手元が見えるよう、CX40・BX3500・BX2700からパーツの良いとこ取りをしました。


さて、折角のサプライズプレゼント。
私からも一つサプライズで、オリジナルの包装紙をご用意しました。
もちろん、出芽酵母のパターン柄です。(※クリックで拡大版が表示されます)

オリジナル包装紙.jpg マスキングテープ.jpg

よくぞこのマスキングテープが、東急ハンズ某店に入荷していたものです。
いかがでしょうこの柄、金色の出芽酵母に見えませんか?

3月上旬のお祝いの席に無事間に合ったサプライズプレゼント、
大隅先生も奥様の萬里子先生も大変喜んで下さったそうで、本当に何よりでした。
大隅先生、重ね重ねこの度のご受賞おめでとうございます!!


posted by ucchy at 09:29| Comment(0) | イラストのお仕事【科学】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年04月10日

日本微生物生態学会の和文誌 表紙が新しくなりました!

3年ぶりに、日本微生物生態学会和文誌の表紙イラストが一新されました。
今回もイラストを担当させていただいております。

微生物生態学会和文誌2016.jpg

研究者と顕微鏡で「観察」という専門性を表現した旧バージョンとはうって変わり、
今回は、研究者と塩基配列&化学構造式で「分析・解析」という専門性を前面に出しました。

中央のブラックボックスから溢れ出るのは、未解明のゲノム領域を含むDNAリボンであったり、
まだまだ知られていないことの多い既存の微生物たち、エチルアルコールやペニシリン、
2015年のノーベル賞受賞で注目を集めたイベルメクチンに代表される、微生物由来の化合物です。
様々な環境で微生物が作り出す有用な天然化合物の発見と、それらの分析・解析を進めることは、
基礎分野の発展を支え、新たな有用菌株や有用化合物の発見、遺伝子工学による菌株の改良や
有用化合物の大量生産といった、医療や産業への貢献にも繋がる大きなテーマでもあります。
そうした未来への可能性を含む『微生物資源に注目した基礎研究』が今回の主題となりました。

また、幹事の先生方からのリクエストにより、「年代を超えて研究する」「若手を育てる」という
メッセージを込めて、男子高校生と中高年の男性研究者を描いています。
前回は「女性」という設定でしたので、今回は安直に2人とも「男性」という設定にしました。

微生物生態学の分野が益々発展しますように、また市民講演会などを通して多くの子ども達に
微生物研究の世界の魅力が少しでも伝われば良いなと願っています。


posted by ucchy at 11:08| Comment(0) | イラストのお仕事【科学】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年12月24日

Cell Reportsの表紙イラスト

宮崎大学の西頭先生からご依頼いただいたイラストが
科学雑誌Cell Reports Volume 13, Issue 5の表紙に採用されました。
Cell Reportsの公式サイトにイラストの解説文(英語)があります。

CellRep表紙

それぞれの物質や役割をどう表現しようかな、と思案している時に突然思い出したのが
『蝦蟇の油売り』でおなじみの“和紙を日本刀で細かく切って紙吹雪にする”という、あの芸でした。
まさにプロテアソーム(=タンパク質を分解する酵素複合体)の動作にピッタリ!
というわけで、今回はメインで働く物質をお侍さん風に擬人化しています。

また、もう一つのポイントは折り鶴です。
リボソームによって合成されたばかりのタンパク質の多くは、
それぞれ決まった形に折り畳まれる(=フォールディング)ことで、機能を発揮できるようになります。
多くのタンパク質は、誰の助けも借りず、あるべき形になるよう自発的に折り畳まれますが、
中には(今回の論文にも登場する)シャペロンと呼ばれる、折り畳み係のタンパク質によって
折り畳まれるものもあります。プロテアソームに分解されるタンパク質を『紙』に例えたことで、
シャペロンに折り紙を折ってもらうという設定が、ここで上手いこと可能になりました。
“国際的に有名な折り紙のモチーフ”で“いかにも和風”といえば…鶴に敵うものはありませんよね。

なお、このイラストではちぎり絵風に見せるために、いつも通り墨汁で描いてはいますが、
主線として描いたものの内側を塗りつぶすような感じで、墨汁の線の輪郭だけを使用しました。
いつもとはちょっと雰囲気の違うイラストに仕上げています。


posted by ucchy at 01:21| Comment(0) | イラストのお仕事【科学】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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