プレゼント用のイラストをご依頼いただきました。
お贈りになるお相手は留学時のご友人だそうで、ご専門がウニの発生学とのこと。
現在、アメリカの大学でご活躍中の女性研究者です。
ウニは種類も形もさまざまで、デザイン的にすごく面白い生き物ですよね。
殻の模様はとても綺麗だし、模様や棘の形のバリエーションも多様だしという訳で
世のアーティスト達が見逃すはずもなく、既に数多くのウニアートが世に出ています。
そういえば私も、不正形類の殻コレクションを作りました(→ 某私学へ寄贈済み)
さて、ご専門に研究なさっている方のお手元へ届くのであれば
アートであることに加えて、見た目と科学的な正確さの両立を図らねばなりません。
他の誰ともアイデアが被らないよう、新しい絵を思いつく必要もありますし、
折角のプレゼントですから、とびきり驚いて下さるような仕掛けを合わせて考えます。
まずは、膨大な資料集めと下絵描きからスタートです。
こうして、殻の模様はオリジナルのウニ包装紙とメッセージカードの表紙になりました。
一方、メインのイラストには海洋性のプランクトンを色々と盛り込みます。
海藻をはじめとするベントスも、デフォルメしつつ普段以上に描き込みます。
ウニやクモヒトデの幼生には細く透明な骨格があり、発生段階とともに複雑に成長します。
その骨格の形成される場所と順番がけっこう厳密に決まっているらしいのですが、
あいにく動物学教室の出身でない私には、どの本で調べれば良いのか、見当すらつけられず…(涙
かき集めた原著論文のFig.から、毎夜せっせと骨格の位置や向きを読み取っては
動物学教室出身の先輩サイエンスイラストレーターのお姉さん達にチェックをお願いしたり、
「良い本があるよー」と動物発生段階図譜
完成までの約8ヶ月、辛抱強くお待ちいただいている間に十分な試行錯誤ができ、
おかげさまで無事に納得のいくイラストに仕上がりました。
最終的な出力サイズはA2(420×594 mm)です。

ご友人の方の一時帰国に合わせた集まりで、奥様が直接手渡しされた際に
とても喜んで下さったとのこと、本当に嬉しく有り難いことです。
いつか、ご本人からウニの研究のお話を色々とお聞きできるチャンスがやってきますように。



