全国で順次上映中の映画「東京公園」の原作者でもある
小路幸也さんの新刊『残される者たちへ』が10月6日に発売されました。
今回は、2008年に発売された単行本の文庫版です。
すでに読まれた方の中には色々とご意見ご感想がおありでしょうが
私が最初に原稿を拝読したところの感想としては
「寂れ行く団地を舞台に過去と日常が交叉する、切なさ溢れる物語」でした。
全体的にミステリー調が漂うものの、SF的な要素が登場したり
青春小説ならではという描写もあったりで、一度で何度でも美味しい。
ページをめくるたびに目の前へ鮮やかに浮かび上がる情景、
ノスタルジックで独特の空気感は、好きな人には堪らないはずです。
さて。
文庫本の表紙カバーのイラストを担当させて頂きました。
今回のお仕事は、まず「あれ?団地が描けない!」という
(非常に個人的な)衝撃の事実を知るところから始まります。
それは私自身が団地(や団地での暮らし)を全く知らなかったからです。
うちの地元は、遠浅の海と低い山と短い川に囲まれた狭い町なので
団地というものにそもそも馴染みがありません。
見たことのないものは描けないんだもの みつを ←ジロリ
大慌てで写真集や資料本を買い集めたり団地巡りをしたり
宝塚にある仁川団地出身の友人に案内してもらったりして(TH嬢ありがとう!)
なんとか「団地とは何ぞや」をイメージすることが出来ました。
一番頑張ったのは、今までほとんど描いたことのない“夕暮れ時の色合い”。
(ご覧の通り、主線と構図は毎度おなじみのパターンです)
画面上では表現できたとして、実際の印刷でどう再現されるのか
色校正を経た後も、頂戴した見本を開封するまでドキドキでした。
結果?もちろん両手離しで大喜びしましたよ!
まさに関係者諸兄のご尽力の賜物、本当にありがとうございました!
ちなみに、お気づきの方がおられるかもしれませんが
私の絵にしては珍しく、人物の肌に色が入っています。
過去3度くらいは描いたような記憶があるものの、まぁ滅多にないこと。
背景が夕暮れ時なので、雰囲気的にちょうど良い感じになりました。
実は、ボツになった表紙イラストがありました。
どちらのバージョンも気に入っているので
ボツになろうが採用していただけようが構わなかったのですが
このままHDDの肥やしになるのも勿体無いような気がして
しれっとお披露目!( ´θ`)ノ